天台宗で草木発心修行成仏論が生まれたのはなぜでしょうか。
なぜ天台なのか…ということは、まだはっきり説明できていません。個人的には、比叡山周辺での樹木伐採に原因するのではないかと考えています。平安京を維持するための伐木は、周辺の山々にかなりの負担をかけていました。桂川や賀茂川は頻繁に洪水を引き起こしていますが、一説によると、それは上流に樹木が失われ、山が水瓶としての機能を低下させたためともいわれています。日本天台で草木発心修行成仏説のインデックスのように扱われる天台座主良源は、近江国の木津氏の出身でした。この氏族は、山から伐り出してきた樹木を河口に集積し、管理するのが役目です。彼の目には、幼い頃から樹木の〈殺害〉が焼き付けられていたわけです。そうした意味では、天台の試みは、実際に伐採に当たった杣人たちの後ろめたさ、草木供養の念に起因していると考えることもできます。