猫の捉え方がヨーロッパ世界とは対照的な気がしましたが、やはりヨーロッパでも畏怖と愛玩が同居するような認識が存在したのでしょうか?

今後講義でも少しお話ししますが、ヨーロッパ世界においても、長らく猫は両義的な存在でした。古くエジプト文明に始まる神聖化がみられる一方、そうした古ヨーロッパ的な心性は、キリスト教文化においては悪魔的なものとして貶められます。民話的世界においても、一方では「長靴をはいた猫」のように勇敢で利口な動物とされながら、もう一方では魔女の手先である不吉な獣と扱われたりします。日本にも語り継がれる「猫の宿」「猫の王」と類似の伝説は、ヨーロッパ世界においても確認することができます。現生のイエネコの系統的起源は、DNA分析によるとリビアヤマネコであるらしいので、猫にまつわる言説や心性には、派生的伝播に基づく共通性がみられるのかもしれません。