陸と海の境目が境界になるというので、「橋の上で出会ったものは人間でない」といった、昔話のルール的なものを想い出しました。これも、橋の上が他界との境界であるということでしょうか。でも、橋の上って、どことどこの境目になるのでしょうか。
やはり、橋も代表的な境界のひとつです。まず橋は、川や湖沼などで遮られたあちら側/こちら側を繋ぐもので、文字どおりの境界を意味します。仏教ではこちら側を此岸、あちら側を彼岸と表現しますが、それはそれぞれ俗世、浄土の暗示ともなっています。7世紀における宇治橋の造営を伝える「宇治橋断碑」では、橋を架けて「人畜」を向こう側へ渡すことが、衆生を成仏させることとイコールで語られていました。よって橋は聖なるものと認識され、寺院のように擬宝珠で飾られたり、完成時には「橋供養」なる法会が催されたりしたわけです。また、ハシという語は、天上へ渡る階・梯=キザハシをも意味したため、一層境界としての性質を強くしていたようです。