神話の作成者は、物語の文学性のようなものをどの程度意識していたのでしょうか。

「文学性」をどのように定義するかにもよりますが、成文化された神話の場合、どのような文字・句を用いてどのような文章を書くか、表現するかという点が問題になります。とくに古代日本は話し言葉と書き言葉が違いますので、成文化する場合、漢籍の表現に依拠し、それを利用・援用してレトリックを駆使せざるをえなくなります。もちろんその多寡、技巧の上手・下手は存在しますが、そうした意味での文学性は意識されるでしょう。また口承伝承の場合も、聞き手の関心をいかに惹きつけるかが重要な意味を持ちますので、そのライブ感覚のなかで、種々の修飾、要素の付加/省略、強調/平滑化などさまざまな改変が加えられます。それも、文学性を意識したものといえるでしょう。