中国南北朝時代の疾病交換の話が出ましたが、その半世紀頃前のゲルマン民族の大移動の際には、そのような疾病の流行はなかったように思います。民族移動の際にパンデミックが起きるきっかけは、何かあるのでしょうか。

南北朝の時代の天然痘の初出も、恐らくは、それほど大きなパンデミックにはなっていないのではないか、と思います。戦争が相次ぎ衛生的に劣悪な情況が散発的に生じ、国家・社会機能の混乱により充分な予防や治療が受けられないとなれば、感染は拡大します。他文化が混じり合い、いままでまったく抗体や免疫のなかった感染症が入ってくれば、瞬く間に患者は増えてゆくでしょう。しかし、天然痘が夏期に大流行を迎えるように、温暖な気候の方がウィルスは繁殖しやすい。中国で問題化したのは南方、江南地方でしたが、ゲルマン民族の移動はより高緯度地域で起きており、その点が影響したのかも分かりません。