◎9の史料に注が付いているが、これは原文にも書かれているものなのだろうか。それとも『国史大系』が付けたものなのか。前者とすれば、書物に注を付ける概念はいつ生まれたのだろうか。

あれはもともとの官符に付いていたらしい注ですね。文章に注を付ける行為は東アジアの伝統であり、東アジアの書物の歴史は、注釈の歴史といってもよいものです。古代の中国で成立した伝世文献で、注釈の存在しないものは皆無といってもいいでしょう。何が現存最古に当たるのかというのは微妙な問題ですが、歴史学の立場から注意したいのは、やはり『春秋』でしょうね。『春秋』の本文すなわち「経」自体は極めて簡略なもので、何を意味するのか分からない部分もある。これを詳細に注釈し当時の情況を具体的に浮かび上がらせるたのが「伝」であり、現在は『左氏伝』『公羊伝』『穀梁伝』の3つが一般的なものとなっています。