クラストルの考えを聞いてみて、人類はどのような方向に向かうのが幸せなのか、と考えずにいられませんでした。先生はどうお考えですか?
難しいですね。もちろんぼく自身にも、国民国家の先にある「必要なシステム」はみえてはいません。しかし、あらゆる人間集団にとって、可能な限り公正な状態を保持できるシステムを模索してゆく必要はあります。資本主義がその仕組み自体に格差を拡大し続ける因子を持つなら、それを是正することはいかにして可能なのか。国民国家が統合のために個々の自由を抑圧するのならば、それを回避することはどのようにして実現しうるのか。そうした課題、諸問題を追究してゆくためにも、国家形成とは異なる道を歩んだ人々の智慧は重要だろうと感じます。また、自分の立っているポジションを常に相対化し、別のあり方、ベクトルを想像してみることは、閉塞に陥らないために必須の心構えでしょう。