アダムとイヴの楽園追放において、イヴが蛇にそそのかされることが原因となります。これは昔から女性差別があり、女性が蛇と結びつけられていたことを意味しているのではないでしょうか。

『創世記』の原型は、世界における現存最古の神話「ギルガメシュ叙事詩」に登場します。主人公のギルガメシュが、冥界を訪れ試練を乗り越えて得た「不死の草」を、蛇が奪い取ってしまうというエピソードです。それによって蛇は不死の力を手に入れ、人間は死すべきものとなる。『創世記』で蛇がイヴに勧めるのは、智慧の実、生命の実。これを実らせるのは世界樹で、シュメールなどではイチジクです。世界樹に蛇が絡みつくのは、今日の授業でもみたように、世界中にみられる形式です。イヴは蛇の奸計にはまって楽園を追われますが、それは死するものになることも意味するので、ギルガメシュのたどった運命と同じでしょう。『旧約聖書』は確かに男性優位に書かれていますが、あの蛇は男性象徴(すなわちリンガです)ゆえに女性と関連づけて語られているのであって、今日の道成寺縁起のような女性蔑視ではないと思います。