アフォーダンス理論というのは、もともとどの学問分野で生まれた(語られるようになった)ものなのでしょうか。また、動物の捕食関係に当てはめて考えたとき、食べられる側にも利点があると述べることに、どの程度妥当性があるのでしょうか。

生態学的認識論のジェームズ・ギブソンが起源です。日本では近年、哲学・倫理学河野哲也氏が、アフォーダンス環境倫理に援用した研究を広く展開しています。食べられる側にも利があるという云い方は、確かに語彙矛盾のある表現なのですが、生態系全体の種の保存から考えた場合には、そうした場合もありうるということです。つまり、その捕食関係が生態系のうちでバランスよく成り立っている場合には、お互いの種にとって利益のある選択になっているわけです。しかしつい最近、NHKラジオの夏休み子供相談で、「なぜ動物には肉食と草食がいるのか」という子供の質問に対し、相談者が「草食動物は、疫病などで弱った個体を肉食動物に食べてもらうことで、群れの安全を維持しているのだ」といった答え方をし、ネット上で称賛されるということがありました。しかしこうした答え方は、弱い個体は排除しないと集団が危険に曝される、弱い個体は消し去ってしまうのが当たり前だ、という議論に転用されてしまう危険があります。ヒューマニズム環境倫理の齟齬が露わになる問題でもあり、注意が必要でしょう。