死体化生による穀物起源神話が、単に死んだ神の遺体から穀物が発生するのではなく、殺された神の遺体から生じるので、農耕への後ろめたさは、多少なりとも共有されているのだと思います。しかし、神話を文字として残した日本の古代王権は、農耕を推進して狩猟採集的な習俗・心性を改変しようとしていたので、開発に際して神々を殺害してゆく神話が多く残っている一方で、そのことに強い負債感を感じるような伝承はあまり見出せない情況です。しかしいいかえれば、そうした神殺し神話が広く語られたことには、そうしなければ払拭できない怖れが強く存在したとも考えられます。