氷河期が終わってからも流入があったとのことですが、危険な海を渡ってまで日本列島に来る理由は何でしょうか。 / 人類の移動についてですが、なぜわざわざ生活が困難な酷寒の地へ移動し、定着することもあるのでしょうか?

重要な問題意識です。個々の目的は恐らくさまざまでしょうが、前提となるのは、ホモ・サピエンスが移動によって生活領域を拡げ、その地域に適応することで生存競争に生き残ってきたということです。クロマニヨンとネアンデルタールを比べたとき、氷河期において、前者は寒冷地へも進出し同地で生活していたことが発掘により確認されていますが、後者は比較的温暖な地域を動くことができませんでした。これは、両者の自然を素材として適応に必要な道具を作り出す能力に、根本的な差違があったためだと考えられています。一般的には、もともと生活していた地域での人口圧の高まりによって、新たな生活領域を目指して移動を重ねてゆくことになるのでしょうが、寒冷地への移動・定着に関しては、ホモ・サピエンスでも、やはり環境的限界があったと思われます。温暖化によって北進の限界が上昇すればさらに北上し、寒冷化によって限界が下降すれば南下する。その繰り返しのなかで適応のための知識・技術も高度になり、限界もだんだんと広がっていったものと考えられます。海の場合も、基本的には同じことだと思います。海洋地域で生活文化を育んできた者にとって、内陸奥地へ移動してゆくより海へ漕ぎ出してゆくほうが、移動としては自然だったのでしょう。