日本の神話でギリシャ神話に類似するものがありますが、日本とギリシャにおける神話の創出は、どちらが早いのでしょうか?

どちらが古いかを確認することは難しいのですが、例えばわれわれの知る日本の神話は『古事記』『日本書紀』『風土記』といった、国家が編纂した史書・地誌の形態で残っています。これは、ヤマト王権律令国家が、自分たちの建国の正史として作り上げたもので、ここに書かれているとおりの神話が、古代社会において普遍的に伝承されていたとは考えられません。事実、中国の書物などに基づき、さまざまな編集が施されています。一方のギリシャ神話は、やはりいまわれわれが読めるものは、叙事詩や演劇の形式(娯楽)になったもので、これも共同体で語り継いでいる「生きた神話」ではありません。一般的に、古代の神話の展開過程を考えるとき、共同体の神話→王権・国家の神話→娯楽としての神話といった変遷を辿ることが多いので、その意味ではやはり、いまぼくらが読める内容のもので考えれば、ギリシャ神話のほうが古くまで遡ることが可能なのだと思います。