木鎮めの儀式にイケニエは存在したのでしょうか。

日本の場合には行われた形跡はありませんが、世界的にみれば木に対する供犠はよくみられます。ただし、木鎮めに関わる物語のなかには、名工左甚五郎の妻が人柱となるなど、女性を犠牲とする説話が時折みられます。これは実際に女性がイケニエに供されたというより、神婚祭祀の痕跡とみるべきでしょう。大殿祭の祝詞にも、樹霊である屋船命にククノチトヨウケビメの男女神の性格があることが語られます。民俗学神野善治氏など、不安定な樹霊に配偶神をあてて安定を図る形式が原義だったのではないか、と推測しています。