日本の神話に非常に興味があります。どんな本を読めばいいのか教えてください。

日本の神話に関する研究は厖大で、みなそれぞれに読むべき価値を持っています。オーソドックスなところでは、他の地域の神話などとの比較、縄文や弥生といった考古学的成果との関連で考えるなら、大林太良や吉田敦彦といった人の本が面白いでしょう。ほかに最近書かれたものでは、斎藤英喜『読み替えられた日本神話』(講談社現代新書)、工藤隆『古事記の起源-新しい古代像をもとめて-』(中公新書)がお薦めです。前者は、古代神話が中世〜近世文化のなかで様々に読み替えられ変容してゆくさまを捉え、神話が古代だけのものではないことを教えてくれます。斎藤さんは祭祀や陰陽道に詳しい人で、例えば安倍晴明サブカル的に人気を獲得する以前からそれらの研究で知られていました。文章が大変面白くて読みやすい人です。後者はやや専門的ですが、中国の少数民族に受け継がれている神話の分析から、『古事記』をそれ以前の「無文字時代の神話」すなわちナラティヴへ引き戻し、より豊かな意味のなかで語り直そうとした書物です。きっと、これまでの神話観が覆るような発見があるでしょう。