俗に“トンデモ学説”と呼ばれるようなものが、近頃テレビなどでも多く取り上げられています。しかし、普通の学説と“トンデモ学説”と呼ばれるものの間には、明確な区別はあるのでしょうか。

確かに、「明確な基準」といわれると存在しないかも分かりません。「歴史学的常識を逸脱している」といった見方では、時代・社会の変化に伴う価値観の移り変わりによって、あらゆる学説が「トンデモ」たりうるという結論に至ってしまいます(ま、本質的にはそうなんですが)。しかし、トンデモ学説なるものを子細に検討してみると、大部分が無批判の牽強付会によって成り立っていることがみえてきます。つまり、自己批判の回路が充分ではなく、検証作業がほとんどできていない。思い込みだけで突っ走っているということです。梅原猛しかり、井沢元彦しかり。歴史学の基本的な訓練を受けていない、というと権威的に聞こえるかも知れませんが、やはり、歴史家にとって史料批判の熟達は不可欠なのです。