蝦夷が夷狄であるなら、蘇我氏の族長が「蝦夷」を名乗っているのはなぜなのでしょう。

エミシというヤマト言葉については、元来「強力な人、強い勢いを持った人」といった意味があり、東国のエミシについてもそうした意味で使われていたようです。蘇我蝦夷のエミシも同様でしょう。大化改新以降の急速な中央集権化のなかで中華思想の受容が進み、エミシを「蝦夷」と表記する方法が一般化してきたわけです。一方、エミシには「毛人」などの表記もあることからすると、『日本書紀』がわざわざ「蘇我蝦夷」の字を充てたのには、蘇我氏を貶める意図があったのかも分かりません。