小子部氏と雷神の話が興味深かったです。蛇が雷神として祭祀されているとのことですが、水神として祀られることも多いと思います。なぜ蛇が神聖視されるのでしょう?

蛇はアジアでは水神とみなされることが多く、列島では、縄文時代からその傾向がみえます。狩猟採集社会では、様々な自然地形を代表する動物たちを「主」として信仰する場合が多いですが、蛇は沼地や湿地帯の主であったようです。蛇をモチーフにした土器などは縄文後期の中部地方で見つかりますが、その頃同地域では原始農耕の芽生えがあり、雨や水に対する意識が強くなった表れではないかと考えられています。しかし、世界的にみると蛇への信仰の中心は、彼らが脱皮を繰り返すこと、すなわち「死と再生」の象徴であることにあるようです。現存する世界最古の神話といわれるギルガメシュ神話でも、蛇は、ギルガメシュが手にするべき不死の力を奪うもの(すなわち、人間から横取りして不死の力を持つようになったもの)として語られていますし、『旧約聖書』創世記でイヴを誘惑する蛇もそのバリエーションと考えられています。農耕祭祀で蛇を雷神や水神として崇めるのも、その本質に再生の力=豊穣を生み出す力を持っているからなのでしょう。