2009-05-01から1日間の記事一覧

平城朝にも藤原氏の影響が大きかったと思えるのですが、そうした背景を無視して『古語拾遺』を編纂することは可能だったのでしょうか?

もちろん、平城天皇の改革には朝廷内で反対意見もあったことでしょう。だからこそ、彼の政権は早期に潰えることになったのかも分かりません。

小子部の伝承については『霊異記』の方が詳しく書かれていましたが、これは『霊異記』の特徴なのでしょうか? 『書紀』と『霊異記』とで共通する説話があった場合は、基本的に『霊異記』の方が詳細なのでしょうか?

『書紀』はもちろん、『霊異記』も歴史書としての側面を持っていますが、やはり本質的には説話集なので、後者の方が物語的に詳細になることはあるかも知れません。講義で採り上げた伝承の場合、両書の情報ソースの問題も関わってきます。定説的には、ともに…

史料8の『書紀』の記述で、確かに一度は蛇(雷神)を捕獲・制圧していますが、その後恐れて逃がしているのは、神を尊ぶ姿勢の表れなのでしょうか。制圧するなら完全にコントロールすればいいのに、と思ったのですが。

『書紀』は神と天皇との関係をところどころで修正し、天皇の権威を高めようとしていますが、すべてを徹底的に捏造しているわけではありません。ここはやはり、情報ソースである小子部氏の伝承に大きく規制されたのでしょう。また、天皇の自然神への優位は、…

『霊異記』のなかで、小子部栖軽が雷神を勧請する前に天皇が交合する場面がありましたが、これは雷を暗示していると考えてもいいのでしょうか。また、『書紀』の三輪山の大蛇も雷を連想させるものなのですか?

鋭いですね。一説によると、大安殿での交合は、やはり農耕の豊穣を祈るための儀式だったのではないかとも考えられています。現在でも、農耕予祝儀礼のひとつとして、男女がもつれあうように舞う芸能が存在します。性交渉を擬することで収穫を祈るのはよくあ…

小子部は少年で組織されるとのことですが、……背が高いと雷に打たれる可能性が高くなるからってことはないですよね?

ああ!それは考えませんでしたね。面白い発想です。恐らく、雷神は蛇だけでなく子供とも表象されることが多いので、蜾蠃が赤を身に纏って雷神を演じたのと同様、雷神と似た姿をもってそれと交渉しうるようにする呪術なのだと思います。

小子部氏と雷神の話が興味深かったです。蛇が雷神として祭祀されているとのことですが、水神として祀られることも多いと思います。なぜ蛇が神聖視されるのでしょう?

蛇はアジアでは水神とみなされることが多く、列島では、縄文時代からその傾向がみえます。狩猟採集社会では、様々な自然地形を代表する動物たちを「主」として信仰する場合が多いですが、蛇は沼地や湿地帯の主であったようです。蛇をモチーフにした土器など…