仏教の地獄の概念は、元来どのように成立したものでしょうか?

インドの時点で、すでに罪人の堕ちる地下の牢獄(ナラカ=奈落)、その支配者たる閻羅(閻魔)も存在していました。それが西域を経過して中国へ入ってくると、中国固有の冥界と習合することになります。中国では、五岳のうち泰山の内部に冥界があるものと考えられ、その統括者である泰山府君が人間の寿命を司るとものとみなされていました。この信仰において、すでに使者が泰山のもとで苦役に従事するという発想があったようです。仏教が伝来すると、僧侶の喧伝活動によって、中国各地の神々が仏教のもとに解体もしくは吸収されてゆきます。泰山府君も仏を信奉する善神と位置づけられ、やがて閻羅の同僚として十王(地獄を統括する十人の王。西域や中国の冥界神が取り入れられたもの)の一翼を担ったり、閻羅と同一視されるようになってゆきます。