何も喋らないし、何も示してくれないカメという動物に、占いをする人間の心理がよく分かりませんでした。

アニミズム的世界においては、動物の本体は、その肉身に宿っている精霊です。ゆえに亀卜とは、その精霊に働きかけて託宣を得る(声を聞く)ものなのです。『史記』亀策列伝でも、卜官は、亀に「玉霊夫子」と呼びかけています。これは、中国の少数民族に残る骨卜の風習でも同じで、 アニミズム的世界においてはある程度普遍的な現象なのだと思われます。古代に生きた人々の耳には、樹木や動物、風や大地の語る声が聞こえていたのかも知れません。