人狼変身譚を異類婚姻譚の一種とすると、熊との婚姻の場合のような正当化の利益は得られないように思います。狼を動物の主として婚姻した場合、人間に得られる利益とは何ですか。 / 狼男の話で、変身ベルトは毛皮に通じるものなのでしょうか。
北欧の神話・伝説に現れる狂兵士ベルセルクは、熊や狼の皮でできたベルトを身に付けていたといいます。日本でもそのような例はみられますが、古ヨーロッパ世界では、自らの強力を誇示するために、狩猟した熊や狼の毛皮を着用することが行われたのでしょう。狼との婚姻も、熊の場合と同様(肉が主目的ではなかったでしょう)、動物の主の威力を継承するものであったと思われます。婚姻譚を語り伝える狼トーテムは、狼の知恵や俊敏さ、果敢さを受け継ぐ部族とされたのではないでしょうか。人間が狼になる物語は、このような想像世界から生み出されたものでしょう。シュトゥッペ=ペーターの変身ベルトも、直接的にはベルセルクなどに、そして原型としては婚姻譚で語られたであろう毛皮に、起源を求められると思います。