公判記録をみていて、事実と虚構の境目、実話と神話の境界が分からなくなった。どのようなときに神話が作られるのですか。

神話は、神々の活躍によって現在の諸々の事物の起源を説明する言説で、それ故に世界観の根本をなし、法律や倫理の根源としても機能します。これは時代を通じて担う意味が変容するため、近年では、中世神話や近世神話といった言葉も使われています。近代以降の場合、社会における機能をみて比喩的に、影響ある支配的言説などを「神話」と呼ぶこともあります。シュトゥッペ=ペーターの公判記録は、キリスト教と当時の支配階層のイデオロギー操作、社会の深層に息づく古ヨーロッパ的信仰、民衆の不安が複雑に絡み合って作られた共同幻想というべきでしょう。現在でも、例えば北朝鮮に対する日本人のイメージなどで、同様の現象がみられるように思います。このような言説が生まれることは、別に不思議なことではないのです。