なぜヨーロッパでは狼を農耕の害獣とするのに、日本では害獣を捕食してくれるものという違いが生じるのでしょう。

やはり、牧畜主体か栽培農耕主体かが大きなポイントとなってきます。牧畜の場合、牧場にたむろする羊は最高の標的となります。狼と羊のシンボル性は、童話から聖書にまでみることができますが、その起源は古代ギリシャにまで遡ります。牧場の拡大により住処の森林が減少していったことも、家畜の被害が増大した原因の一端もそこにあります。一方の栽培農耕では、狼が害をなす要素はありません。むしろ作物を食べに来る兎、イノシシ、鹿を待ち伏せして襲うこともあり、守護神というイメージが強くなったものと考えられます。しかし、中世後期の大開発は、多くのはげ山や草山を作り出しました。山内に留まっていた狼が、次第に里の近辺に出没するようになってゆきます。