日本文化と東南アジアとは関連性があるのでしょうか。

講義との関連でいえば、例えば「殺された女神」や「穂落神」の神話・伝承でしょうか。前者は『日本書紀』『古事記』に記載のある穀物化生神話で、スサノヲ(あるいはツクヨミ)が穀物神のオオゲツヒメ(あるいはウケモチ)を殺すと、その死体から穀物や蚕などが生まれるという内容です。イェンゼンが、インドネシアのヴェマーレ族の調査で採取したハイヌヴェレ神話が有名で、その地域の食生活において重要な穀物が化現するよう変化し、東南アジアから東アジア地域へ広がっています。死体から生じるという点で「死と再生」の思想も含んでおり、日本の考古学者のなかには土偶祭祀に結びつけて論じる人もいます。後者も穀物の起源に関わる神話ですが、生業の中心を占める穀物を、穂落神である鳥が天の世界から運んできてくれたと解釈するものです。やはり、東南アジアから東アジアにみられます。弥生時代には、水田の傍らや集落の周濠に飛翔する鳥の模型が立てられたり、稲作の祭祀を担う銅鐸に長頸・長脚の鳥の姿が描かれたりしていますが、中世以降には鶴を穂落神とする伝承が各地に確認されることから、これらも穂落神の形象ではないかと想像されています。