人間が自己を認識するために異質なものとの関わりを作る、とのことでしたが、異類婚姻では両者の間に垣根を作らないという前提があり、矛盾しているように思われたのですが…。

言語学認知科学の世界では、あるものを同定しようとする場合には、他の物との差異化が必要であるといわれます。人間が獣を獣として認識したとき、自分たちがヒトとして立ち現れてくる。あるいは逆に、自分たちをヒトと認識したときに、獣は獣として姿を現す。この二つの認識は相関関係にあるということができるでしょう。そういう意味では、アニミズム世界においても、人間と動植物はちゃんと区別されているわけです。そのうえで、狩猟や採集を通じて結びついた両者の関係を説明しようとするとき、人間も獣も本体は精霊であって究極的には同じ存在である、という論理が形成されてくる。それがなぜなのか、何なのかが問題であるわけです。講義では「後ろめたさ」や「負債」といった概念を提示しましたが、実際はもっと複雑な心理作用があるのでしょうね。中沢新一さんの『カイエ・ソバージュ』シリーズが、スティーヴン・ミズン『心の先史時代』などを参考に詳しく論じていますので、参考にしてみてください。