何回も熱卜をしていたら、亀の骨格や以前の経験から、熱卜をする位置で結果が分かってしまうのではないでしょうか。 / 一度土に埋めて脂分を取るとのお話でしたが、すべてそれを経ないと卜占の結果に差異が出てしまうように思います。 / 鑽・鑿を入れると、割れ目に沿って「卜」の字が出るのですから、人為的に結果を出すということにはならないのでしょうか。

殷代の熱卜については、王の判断した内容が正しいように結果を改竄したり、望ましい結果が得られるまで何度も灼骨を行う、といった人為的操作が確認されています。しかし、だからといって「まがいもの」なのではなく、卜占自体が、数ある未来の選択肢のなかから望ましいものを引き寄せる知恵であった、必要な未来を顕現させる最先端の技術であったのだと考えた方がいいでしょう。中国文明が自然に手を入れて環境を改変し、牧畜を展開し治水を発展させてきたように、未知の時間にも手を入れて加工するという発想が存在したわけです。この傾向は、中国の卜占文化にずっと付いて回り、漢代における讖緯説の流行をもってひとつのピークを迎えます。