似たような神話が世界中に存在するということは、人間の自然や未知のものに対する思想の発達、変化の流れにはある程度の法則があるのでしょうか。

法則としてしまうのはどうかと思いますが、衣食住の根底的パターンは全人類に共通しているのですから、ある程度類似の思想・思考や神話が生じることは、むしろ当たり前なのだと思います。問題は、その共通性を時代や環境との関係から「固有性」に転換すること、微細な部分をよくよく比べて相違を見出し、なぜ違うのかを考えてみることですね。ただし、カルロ・ギンズブルグなどの歴史学者は、ユーラシアの東西でよく似た宗教現象がうかがえることを、基層的なシャーマニズムの展開として説明しています。物語の運搬者としてのスキタイに注目した研究もありますので、今後、基層文化論や伝播論でも新たな説得力ある考え方が提出されるかも知れません。