史料17で、張隗を身代わりとして連れて行った2人の男は、どういった存在と考えればよいでしょうか。良いものなのか悪いものなのか、いまひとつ判然としません。

かかる形式の話は、後に仏教にも取り入れられ、大きく展開してゆきます。あるいは、もともとは仏教関連のエピソードだったのかも知れません。2人の男は冥界の使者(役人)で、死期の定まった人間をあの世へ連れてゆく役目を帯びています。善悪の価値観を超えた、死そのものの擬人化といってもよいかと思います。冥界には人間の寿命を記録した「鬼籍」が存在しますが、これを削除したり書き換えたりすることで生き延びる、不老不死を得るといった物語が、その後多様に展開してゆきます。