洪水の予告が、なぜ「眼が赤くなる」ことで行われるのだろうか。なぜ「よくない」ことの象徴に赤色が使われるのか。

赤色はいわゆる境界的な色、他界との接点であることを表す色だといわれます。古代では朱や丹といった赤色顔料が辟邪の威力を持つものとされ、墓や寺院、祀廟などに用いられました。赤は、それらのものを象徴する色彩なのです。また、七〜八世紀に中国仏教でよく行われた「懺悔」の方法に、「目から血を流す」という方法がありました。これに依拠する仏教の霊験譚では、仏像が血の涙を流して異変を予言するという形式があったようです。恐らく、「亀の目が赤くなる」というのは、これらの事実を背景に形成された言説でしょう。