神聖視されているのにいちばん食べられているという鹿は、そもそもなぜ大切に扱われるのでしょうか。

鹿の神聖視は弥生時代に始まりますが、これは地霊の象徴だろうと考えられています。鹿の角が樹木を思わせるので、生命の生育それ自体を体現する獣だと認識されたのでしょう。弥生時代には稲作が始まりますが、それは、人間の日光=太陽・天=雨・土地に対する意識を強固にしました。稲作の祭祀に用いられた銅鐸や土器の絵画では、鹿が主要モチーフとなっており、その信仰は稲作の展開とともに確立されてきたものと考えられます。稲作による大地への注視が、鹿への信仰となって現れているということでしょう。