尾瀬ヶ原の低湿地で得られた泥炭柱以外に、古墳時代の気候変動を裏付けるような遺跡・遺物はみつかっていますか。

2000年代後半になって、福井県水月湖を皮切りに、秋田県一の目潟湖など、全国の汽水湖で良質の年縞が得られるようになってきました。年縞とは、汽水湖のような湖水の循環がない沼沢の水底から取れるサンプルで、毎年の堆積物が縞模様をなしているものです。これを現在から1年単位で遡り分析してゆくことで、その年にはいかなる環境の変化があったのか年単位で復原できます。例えば、毎年春から秋に繁殖する珪藻遺体の作る灰褐色層、秋から冬の粘土鉱物のみからなる黒褐色層から、季節性や相対的な気温の寒暖が分かります。また、地層内に含まれる植物遺体から周辺の植生も復原できますし、火山灰などから噴火の痕跡も高精度に知ることができるのです。