死者の国へは船で行くという発想があったようですが、それは「三途の川」みたいなものでしょうか。
「三途の川」は、生者の世界/死者の世界の間に流れる大河で、生前の行いの善悪によって、渡り方に3つの方途があるといわれるもの。仏教と道教、もしくは民間信仰が習合して中国で作られてくる観念なので、日本の古墳時代の「船」とは直結はしません。もちろん仏教伝来以前にはないものですが、川には彼我を分かつ境界の機能があるので、生者の世界/死者の世界が大河によって分離されているという発想自体は、早くから列島に存在した可能性があります。ただし、九州から始まる装飾古墳の「死者の船」というモチーフは、どうやら渡来の記憶や、海上他界(海の向こうに神霊の国があるとの考え方)などの観念と関わっているようですね。神話でも、黄泉国へ向かうことになるスサノオは、イザナキから海の支配を委託されています。海と他界とは関係が深いのですね。