先生は、批判的な目で歴史をみることが重要だといいました。確かにぼくもそう思いますが、それよりも未来に活かすことができるよう、歴史を教えることの方が重要だと思います。

未来について考えることは、歴史学の重要な役割のひとつです。ただし、過去を批判的にみることと、歴史を過去に活かすこととは、二者択一でどちらの方が大切、といった秤にかけることはできません。どちらも大事なのです。なぜなら、例えば国家によって歪められた歴史を無批判に信じていた場合、それをもとに構想される未来は極めて危険になるからです。こうした事例は枚挙に遑がありませんし、かつて日本も経験したことです。歴史に限らず、批判はあらゆる学問の基底です。批判ができなければ、未来ばかりか、現在を正確に認識することさえできません。批判力のない人が構想する未来は、極めて空虚なものです。