なぜこれまでの歴史研究は、誤った歴史を信じ込んできたのでしょうか。

いやそれは、「誤っている」とは思っていなかったからでしょう。現在私たちの語っている歴史も、いまは最も妥当性が高いものと信じているわけですが、後世には「誤っている」と排斥される可能性があります。あらゆる学問は、時代と社会との関わりのなかで進展してゆくものであり、それが明らかにした真実もまた、時代・社会の規制のもとにあることを自覚しておかなければならないのです。自然科学にも「コペルニクス的転回」があるように、これは人文科学、社会科学にのみ当てはまることではありません。あらゆる学問に共通する宿命なのです。