天皇の血筋の神聖性が確立されたのは近代である、とのことですが、日本は実質的に政治を行う組織は代わっても、常にトップは天皇だったのではありませんか?

授業では「我々が考える」と形容を付けておいたと思うのですが、現在の我々が考えるような、国民一人ひとりに神聖性の定着した天皇像は、近代以降に作られてきたものだということです。また、高校日本史や受験日本史では、天皇は宗教的権威を保持し、将軍は政治的権力を掌握したというような整理の仕方をしていると思うのですが、近年の研究によって、徳川将軍も天皇が実践していたのと同種の祭祀
儀礼を行っていたことが分かってきました。徳川家康は権現=神として祭祀されているわけであり、江戸幕府の将軍家も宗教的権威を獲得していたのです。前近代の天皇制のあり方については、近代の幻想から離脱した再検討が必要なようです。