昔、狼に育てられた少女の話を聞いたことがあります。人に近づけようと教育してもできなかったとのことですが、人間と狼との共存は難しいと感じました。先生はどう思いますか?

アマラとカマラの話ですね。最近では、この話は捏造であるとする説が有力になっています。実際は精神に障害を抱えた児童であったようですね。しかし、人間の子供を他の動物が養育することがまったくないのかと問われると、明確に否定することもできないように思います。それは別として、私は、「共存」が、ときには殺し殺される関係であっても構わないと考えています。相手を殺して自分の利益を守るのであれば、逆に相手に殺されることがあっても受け容れねばならない。ただし、お互いの種族を全滅させるような争闘をしてはならない(これは、野生動物によっても自然に守られていることです。意図的にということではなく、不必要な労力を必要とするからでしょう)。よって、ある程度縄張り(これは単に空間的な意味だけではありません。抽象的な問題も含まれます)を確保しつつ、大きな争闘が起きないよう努力することが重要なのでしょう。そうした意味では、共存も可能だと思います。