動物への祭祀に関心を持った。西洋にヘビと婚姻する話があったと思うのですが、それはどういう意味を持つのでしょうか。また、日本にも同様の話はありますか。

はい、日本にも蛇との婚姻譚は古くからあります。奈良県大神神社という、列島最古の部類に入る神社がありますが、その縁起伝承が蛇との婚姻譚です。例えば、『日本書紀崇神天皇十年九月条に載るものでは、三輪の大物主神の妻となった倭迹迹日百襲姫命が、朝になると姿を消してしまう夫に「明日の朝も麗しいお姿を拝見させてください」とせがんだところ、夫は「明日の朝、私は櫛笥に入っている。私の姿に驚くな」という。そこで翌朝みてみると、箱のなかには小さな美しい蛇が入っていたと伝えています。この種の物語は「異類婚姻譚」と呼ばれますが、概ねもともとは、植物や動物を祖先神として崇める氏族・部族の始祖神話(トーテム神話)である場合が多いですね。講義でお話ししたような〈動物の主〉神話の、主と人との契約を物語るものであることもあります。いずれにしろ、動植物/人間との関係が、現在のように偏ったものではなく、立場を交換することが可能な〈対称性〉にあることを示しています。