草創期からだんだんと写実的になっていった土偶が、晩期に再び抽象的な形になるのはなぜでしょうか。

晩期に向けての抽象化は、単なる技術的な未熟ではなく、「写実的に描写しないことに意味がある」段階に入ったものと考えられます。世界の宗教には、偶像を拒否するもの、神霊を具体的な形で描写することを拒否するものが多くあります。一度写実性と過度な装飾性の極点に達した土偶は、続いて、それらを否定することにより神聖化を深めてゆく方向に進んでいったのでしょう。