神社に祀られる男神/女神の区別は、一体どのようにして決まるのでしょうか。宗像の場合、海上の安全を祈るなら男神の方がいいように思いますが。 / 神に対して、男女の区別があるという考え方は、いつ頃から存在したのでしょうか。

神をいかなるものとして定義するかにもよりますが、「神的存在」として広義に捉えるなら、縄文時代土偶の一部も女神を象徴するものとみることができます。人間を含む動物、植物などが持つ雌雄の区別は、精霊や神的存在にも適用されるのが普通で(神話などは、天/地、水/火、男/女など、多く二項対立の形式を基礎に作られています)、それを持たない神格は、より抽象化が進み「性別を超越したもの」と形象されることで生じたものと考えられます。特定の自然環境を表象する神を男とみるか、女とみるかは、地域とその歴史性によって相異します。例えば、日本列島の内部でも、山の神を男性とみる地域と女性とみる地域があります。宗像は、後に三姉妹の女神として表現され、それぞれ沖津宮中津宮辺津宮に祀られる市杵嶋姫・田心姫・湍津姫を意味してゆきます。タギツ姫は激しい波の、タゴリ姫は立ち込める霧の、イチキシマヒメは嶋を祭祀する巫女の形象化です。沖ノ島に祀られるのは市杵嶋姫ですが、原義は巫女以前にあり、様々な産物を供与する母性的恵みと、海難事故や津波などの災厄を併せ持つ両義的な存在として、女性性を持つに至ったのでしょう(繰り返しになりますが、男性的視角からの形象化です)。