『古事記』によると、日本には八百万の神々がいるそうですが、それも神道の思想なのでしょうか。天照大神は、その神々のトップですか。 / 伊勢神宮が創建されたのはいつ頃なのでしょうか。

別のところでも書きましたが、現在の神道は極めて近代的な概念ですので、古代においては神祇信仰と呼ぶのが相応しいでしょう。「八百万」も実数ではなく「たくさん」という意味で、文献によって異なる数が記されている場合もあります。よって、八百万それぞれに名前や固有性が決められているわけではありません。アニミズム的な発想で、森羅万象に神霊が宿っているということです。天照大神は、現在の神道では最高神とされていますが、古代の段階では明確に定まっていたわけではありません。『古事記』や『日本書紀』をみても、アマテラスの位置づけは揺れ動いており、また皇室の祖先神も、もともとは万物を生み出す生成のエネルギーの神格化=タカミムスヒだったのではないかとの見解もあります。古代は神々のパンテオンについて、未だ多様な考え方が存在したものと思われます。アマテラスを祀る伊勢神宮の創建には種々の伝説がありますが、神々の上下関係や高天の原の思想、天皇という発想と密接に結びつく皇祖神という考え方などは、すべて天武・持統朝に形成されたものと推測されています。伊勢地域の太陽神としてはさらに遡る可能性がありますが、王権が女神を祀る施設として設定した時期は、やはり天武朝を遡らないでしょう。