磐座祭祀についてですが、巨岩自体が神とされるのはどうしてなのでしょうか。海や湧水点は生命の生じるところとして理解できるのですが…。 / 木なども祀られたのでしょうか。

繰り返しになりますが、アニミズムは無生物も含めて森羅万象に神霊の存在を認めるものです。樹木信仰などはその典型ともいえ、日本列島では縄文時代の段階から確認できます。『古事記』や『日本書紀』のなかにも、巨樹信仰や、神殺しの対象として樹木を伐採する記事などが出て来ます。天皇の住む宮殿や神社の社殿なども、樹木信仰に基づく祭祀を行って材木を切り出し、樹霊をその守護神にするための祭儀を繰り返して建築されてゆきます。現在の行われる伊勢神宮その他の式年遷宮、諏訪社の御柱祭などに、その痕跡が残っています。ところで、岩石が神と捉えられるのは、その永遠性と関係があります。生命あるものにはやがて終わりが訪れますが、岩石は半永久的にその姿を留めている。そこに古代の人々は神性を見出したのでしょう。古代神話に登場する女神に、イワナガヒメコノハナサクヤヒメという姉妹があります。ともに山の神であるオオヤマツミの娘で、前者は岩から醜さと永遠性を、後者は花から美しさと儚さを象徴しています。皇祖ニニギはこの2人を妻としますが、その醜さからイワナガヒメを返してしまい、永遠の生命を失うことになるのです。磐座を神の宿る場所と捉えるのは、こうした考え方と関係があると思われます。