『梁職貢図』は、江戸時代に異国人を扱った瓦版などが作られたように、民間が作ったものですか。それとも、外国人の見分け方、権力を誇示するなどの目的で作られた公文書でしょうか。

講義で話題にした『梁職貢図』は、梁武帝(蕭衍)の第7子蕭繹(後の元帝)が、北朝からの防衛の要である西府の荊州刺史を務めていた時代に作成されたといわれています。蕭繹は学芸に秀でていて多くの蔵書を持ち、梁に来朝する使節の姿も、首都建康での調査、文献の博捜によって復原したとされます。王族が作成したという意味では、王朝の中華思想的権威を誇示するものともいえますが、一方で朝貢する諸国・諸部族についての学問的関心から描かれた研究書としての一面も持っています。原本は散失しており、古く北宋の写本が知られていましたが、近年台湾故宮博物院に2本の模写、さらに清朝逸文が発見されて新たな研究が行われています。