この時代の外交はみな「いっぱいいっぱい」の印象を受けますが、天皇が主権を握っていた時代、いちばんそつなく外交をこなしていたのは誰でしょうか。

まず、日本の古代国家では天皇専制の時期がほとんどないので、その都度の天皇が国家意思を代表して外交の舵取りをしている、という事例をほとんどみません。しかし、乙巳の変後の、孝徳・天智・天武は、それなりに外交に口を挟んだのではないかと思われます。文武や元明も、率先して政を行っているようです。しかし、お話をしたように7世紀後半〜8世紀にかけて、東アジアは大きな変転期となっています。そつなく外交をこなすのは容易ではなく、みな何らかの失敗を抱えています。結局、外交関係が平穏であるのは、決してそれを主宰している人物の力量のみによるものではなく、当時の国際関係、東アジアの政治・社会情勢がいかなる情況にあったのかが、大きく反映するのだといえそうです。