八百比丘尼の話、面白かったです。私自身は、もしまわりの人々が死んでしまっても、悲しさよりも不老不死の憧れのほうが強いです。先生は不老不死についてどう思われますか?

それは、冗談とか嫌味とかではなく、あなたがいま本当に幸せだからだと思います。そして若いから。ぼくもそう簡単に死にたくはないし、生への執着は強い方だと思いますが、育った環境のなかで生命のはかなさ、死のありようは叩き込まれていますから、一般の人たちより不老不死欲求は強くないと思います。そもそも仏教は、それを求めること、すなわちいくら求めても得られないものに執着することで苦しみが生まれる、という考えが根底にありますからね。実際に不老不死が実現したら、世界は人口の爆発によって破滅してしまうでしょうし、それを回避するために(誰が生き残るべきか、誰が死ぬべきかを選択するために)、いまよりもっと歪な格差や差別が生まれてくるでしょう。環境への負荷を最低限にするためには、実は人口は少ない方がいいわけですから、やはり不老不死を実現するより、高齢化や死というものへの考え方自体を変えてゆくべきだと思いますね。