呪術と医術を並行して処方しているとき、何らかの事情で片方が欠けた時の情況を述べた史料はないのでしょうか。呪と医(薬)の分離の始まりになると思いますので。
呪術に対する信仰は、これほど科学技術が発達し、科学信仰が席巻している現代になってもなくならないので、それほど簡単にはゆかないようです。もちろん、時代時代のなかで、社会的常識や習俗と格闘していたひとのなかには、呪術や宗教的迷信に懐疑的な人も存在しました。例えば、これから「追儺」という鬼霊祓の史料のひとつに挙げる王充撰『論衡』は、祟りや卜占などに対し懐疑的で、その誤謬を論理的に批判しています。しかし、王充の生きた時代以降、祟りや卜占に対する考え方は、ますます強く大きく広がってゆくことになるのです。