不老不死の薬として、中国でも日本でも水銀が用いられていましたが、いつ頃から有毒なものと考えられるようになったのでしょうか。 / 本来身体に毒である水銀や金に不老不死の力が宿ると考えられたのは、金属の持っている独自の性質からだろうか。不老不死に近づいているという実感はあったのでしょうか?
水銀については、もともとその消毒採用、防腐作用などから信仰が始まったものとみられます。それには、いわゆる「朱」色が持つ辟邪のイメージも影響したでしょう。五行思想では、金生水、すなわち金気は水気を生じると考えます。中国の戦国時代に遡る竹簡「太一生水」は、宇宙の根源のエネルギーからまず水が生まれ、そこから世界が生成されるという古代神話の一端を伝えています。両義的ではありますが、やはり水は万物の母との認識はあり、さらにそれを生み出すものとして「金」が発見されてゆく。金や水銀の重要性は、五行思想が発展するなかで、さらに高まったものといえるでしょう。なお中国では唐宋の頃、日本では中世頃に、水銀の毒性を認識するようになってゆきます。道教でもその頃から金液や神丹などの外丹ではなく、精神修養により体内に道と合一する霊薬を作り出す内丹へと、思想が変移してゆくことになります。