これまで扱った病は、やはり食道系のものが多い気がしました。そこから、水に繋がるということはないのでしょうか。

確かに古くから、下痢や嘔吐を伴う病は悪い水によるとの認識があり、それによって水によくないものが存在する、という発想が生まれてきたことは確かでしょう。あとは、洪水に関する経験ですね。このあたりは以前何度か書いたことがあるので、例えば『歴史家の窓辺』のぼくの論文などを参照していただきたいのですが、洪水のあとには不衛生な環境がもとでよく疫病が流行するのです。六朝に勃興した洪水・疫病の終末説は、恐らくは度重なる長江の洪水経験に基づいているものと考えられます。