葦が生命力の象徴ならば、「葦原中つ国」との表現も、神が創造した日本列島の生命力の大きさを象徴するものだったのだろうか。

もちろん、それはそうだろうと思います。もうひとつ学説として存在するのは、葦原が日本の古代国家の故地のひとつともいえる、難波の低湿地の風景だったのではないかということですね。これは、古代王権の発生をどのように考えるかにも左右されますので、普遍的な考え方ではないかもしれませんが、具体的なイメージを伴う興味深い視点です(角林文雄『「日本書紀」神代巻全注釈』塙書房)。