「斑竹姑娘」は『竹取』の再話にみえますが、前者は樹木婚姻譚となっており、後者と対照的です。これは、アレンジする際にたまたまそうなったのでしょうか、それとも起源が異なるのでしょうか。

授業でもお話ししましたが、日本の『竹取』も、樹霊婚姻譚的想像力を背景に成立したといってよいものだと思います。『竹取』では、「斑竹」における息子の役割が、翁と天皇とに分割されている印象です。翁は姫をみつけて育てる役割、天皇は恋人的な役割を担わされています。天皇は、姫と結婚してもよさそうな文脈を持っていますが、姫は彼に不老不死の妙薬を送り、天上へと去ってしまいます。すなわち『竹取』の姫は、天人女房譚における天女の位置づけも担っており、地上へ残される天皇は、まさにその夫の位置づけを引き受けているといえるでしょう。種々の要素が複雑に交錯する『竹取』は、それだけ物語的要素が強く、集団に語り継がれてきた伝承、昔話というより、それらの断片的な素材から個人が作り上げた小説的性格の強いものでしょう。