神社にとって柱は重要であると仰っていましたが、鳥居は何のために設置してあるのでしょうか。

一般的には、神聖な領域の出入り口を画する門を意味しています。神聖な領域と一般の空間とは、目にみえない境界で隠されており、一定のセオリーを順守しなければ「越境」することができないと考えられていました。参道はその唯一のルートで、鳥居はそれを段階的に区切ってゆく門なのです。鳥居らしきものは、すでに紀元前後からインドや西アジアなどにみられ、授業で紹介した古代インドのストゥーパにもそれらしきものが立っています。日本列島でもそうした文化を共有しつつ、また異なる意味づけを加えて展開したものと思われます。弥生時代の環濠集落には、鳥形木製品を取り付けた鳥居のようなものが存在しましたが、しかし神聖な領域を画していたわけではないので、神社の鳥居とは直結できません。しかし、鳥が穂落神のように稲魂を運んでくるもの、もしくは人の魂を運んでゆくものとみられていたとすれば、鳥居自体が神聖なものを呼び寄せるための、何からの依り代を起源としていた可能性はあります。